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2013年07月17日

ヒント(100) 事業承継を成功させるには

ある経営者からのご質問
 創業して数十年が経ち、そろそろ次の世代に経営を引き継ぐ時期だと感じています。自分の子に会社を継がせようと思いますが、どんな点に注意すればいいでしょうか。

回答
 経営者が次の世代にバトンタッチする事を「事業承継」と言います。先に実状を言えば、世の中の事業承継は必ずしも成功していません。

 後継者がいない為に廃業したり他社に事業譲渡したりする会社は全国的にもかなりあります。

 また、後継者がいても「三代目が会社を潰す」と言われるように、創業者が築き上げた会社を二代目が弱体化させ、三代目で廃業に追い込まれるケースも少なくありません。

 事業承継の注意点はいくつか有りますが、一番重要なのは「事業承継は簡単ではない」と自覚する事です。


後継者が会社を掌握できるか 

 血縁者以外に社長を継がせる場合は、業務に精通し周囲からの信頼も厚い社員を次期社長に任命するのが普通です。

 さもないと、社長を継いだ所で、会社を十分に掌握できないからです。

 もちろん、社内で経営能力が一番ありそうな人材が自分の子であれば、その点は問題ないでしょう。

 しかし、血縁だけを理由に自分の子を次期社長にする場合は、本当に業務に精通しているか、社員からの信頼が厚くリーダーシップを発揮できそうか、そして、経営者として相応しい「器」を兼ね備えているか、よくよく確認が必要です。

 そして、もしそうでないなら、今すぐ社長教育を始めるべきです。

 社長教育と言っても、研修に行かせるだけではありません。営業や技術の現場に放り込み、業務を学ばせ、社内の協力者を作らせ、そして、成果をあげさせて社員に一目置かせるようにする鍛える事も必要です。


身の引き際が肝心 

 後継者が業務に精通し社員をまとめる事ができるようになれば、今度は自分自身の身の引き際が大切です。

 後継者が社長として成長するには、社長としての経験を積む以外にありませんが、いつまでも創業者が会長として居座っていると、新社長は自分なりの経営ができず、経営能力がつきません。

 天塩にかけて育てた自分の会社に対する思い入れは並大抵のものではないでしょう。しかし、事業承継とは、その会社を他人に渡す行為です。また、事業承継とは、自分の居場所(会社)を捨て去る行為です。

 どんな経営者でも加齢に伴い経営判断が鈍ります。社外環境の変化にも徐々について行けなくなります。

 後継者が頼りなく不安なのは誰でも同じです。自分の会社を去るのが寂しいのも分かります。

 しかし、いつまでも経営者のイスにしがみつくべきではありません。身の引き際が肝心なのです。


企業理念を継承する 

 事業承継で大切な点をもう一つ挙げると、企業理念の引き継ぎです。

 経営者が変われば経営の方向性は変わります。時代が変われば事業のあり方も変わります。また、変えて行かねばなりません。

 しかし一方で、変えてはならない事もあります。それは、会社の存在目的であり、創業の精神です。

 創業者は何もない所から苦労をして事業を立ち上げてきました。しかし後継者は違います。入社した時、すでに会社は存在していたのです。

 また、創業者は、失うものが何も無い所からスタートしました。しかし、後継者は、守るべきものがある状態から経営を始めます。

 こういった点が創業者と後継者とで決定的に違う所です。

 後継者が会社の重みを知らないと事業道楽に走るかもしれません。逆に、形にこだわりすぎて硬直的な守りの経営に終始するかも知れません。

 後継者が創業の精神を守りつつ、環境変化に合わせた柔軟な経営判断をするには、ぶれない軸が必要です。

 その根本にあるのが企業理念です。明文化し覚えさせるのは当然のこと、理念の意味や重みも含めて次世代にしっかりと引き継いで下さい。

那覇商工会議所・商工ニュース2013年7月号掲載


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Posted by ikai at 15:39│Comments(0)Q&A
 
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