てぃーだブログ › 中小企業診断士 井海宏通の「経営のヒント」 › ヒント(136) 労働生産性を高めるには(1)

2016年07月19日

ヒント(136) 労働生産性を高めるには(1)

 会社の収益性を高めるうえで、切っても切れない関係にあるのが労働生産性の向上です。

 労働生産性とは「従業員一人あたりの稼ぎ」の事ですが、労働生産性が低いと「現場は忙しいのに会社は儲からない」という状況になります。

 労働生産性が重要なのは、多くの企業では、仕入や外注を除くと人件費が最も大きな費用だからです。

 そして、更に問題なのは、労働生産性は給与水準に直結する点です。


労働生産性が低いと人材難に 

 従業員の定着率は、職場環境や業務負荷にも影響されますが、給与水準に大きく影響されます。

 そのため、給与水準の低い会社は、人材の流出に悩まされます。

 従業員の離職は、会社の競争力を低下させます。まず、離職者の穴は新人で埋めるため、人件費がかさんだり、業務効率が下がったりします。

 そのうえ、顧客や業者との繋がりを持つ社員が退職すると、会社が持つネットワークが弱体化します。

 また、有効求人倍率が高い時期は、多くの会社が経験されている通り、人材募集をしても応募が少なく、なかなか従業員を補充できません。

 待遇条件を多少上げた所で、他社はもっと上げていますので焼け石に水です。しかし、既存従業員の手間、新人の給与をあまり高く設定できないのも、ご存じの通りです。

 結局は、会社全体の給与水準を上げるしかないのですが、単純に給与水準を上げても会社の利益が無くなるだけです。収益性の向上とセットでなければなりません。


売上高が増えると人も増える 

 収益性の向上と言えば、売上高の増加を考える経営者が多いと思います。勿論、費用が全く変わらずに売上高だけが増えれば、収益性は良くなります。

 しかし実際は、売上高だけが増える事はありません。

 売上高が増えると、業務量が増えます。業務量が増えると、単純に人手が不足します。

 それだけではありません。売上高を増やすには、営業担当者の増員も必要です。

 提案営業をすれば、受注が増える代わりに提案内容を実施する付帯業務が発生します。つまり、業務が細かく複雑になります。

 スピード対応をすれば、飛び込み受注が増えます。ここでも業務が複雑になります。管理の手間も増えてくるでしょう。

 そのため、現場は「人が足りない」と悲鳴を上げます。そして、従業員を増やします。

 売上高が増えて従業員数が増えれば、会社は大きくなります。しかし、収益性が付いてきているでしょうか。給与水準を上げつつ、会社の利益も増えているでしょうか。


一人あたりの数字を追求する 

 売上高が増えても、従業員も同じ割合で増やすと、割り算すると「一人あたりの売上高」は同じです。

 値引販売などで利益率が下がっているなら、売上高増加に反して「一人あたりの利益」は減ります。

 これでは会社に利益が残りませんし、給与水準を上げる余力もありません。

 経営者は会社の色々な数字を見なければなりませんが、労働生産性は特に重要な指標です。

 特に、売上高が増えているのに利益が少ない、資金繰りが厳しい、という会社は、労働生産性が低い可能性が大です。

 労働生産性を上げる具体策は次回以降に解説しますが、まずは、自社の「一人あたりの稼ぎ(利益)」を把握し、数値目標を立てる事がスタートになります。

 現場の忙しさは、本来、利益と給与に正比例します。その「本来」が崩れているのであれば、労働生産性の観点で、何かしらの問題があります。ここにメスを入れましょう。


那覇商工会議所会報誌 2016年7月号掲載



Posted by ikai at 16:20│Comments(0)
 
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