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2014年06月17日

ヒント(111) 価格破壊者に対抗するには

ある経営者からのご質問
 従来は商品価格が安定していましたが、激安販売する同業者が現れてからは、客がそちらに流れており、値下げ要請も強くなっています。価格を下げると首が絞まるので、出来るだけ価格を維持しようと思いますが、正直な所、苦戦しています。どうすればいいでしょうか。

回答 
 価格破壊者は、安く売っても儲かる仕組みを作った上で参入してきていますので、普通の会社が正面切ってぶつかっても勝てません。

 企業は負ける戦いをしてはいけません。他社に勝てる分野で勝負すべきです。その意味では、客層の絞り込みが重要になります。


ターゲット客層を設定する 

 マーケティングの基本ですが、どんな業界でも客層ごとにニーズ、即ち「商品に何を求めるか」が異なります。また、「価格をどれだけ重視するか」も客層によって違います。

 自分の業界にどんな客層が存在するのか、その規模(人数や企業数)も含めて洗い出してみて下さい。いくつか有るはずです。

 そして、自社はどの客層を狙うべきかを考えてみて下さい。それが御社のターゲット客層になります。

 ターゲット客層が決まれば、その客層に共通したニーズをもっと掘り下げ、何を基準に業者や商品を選ぶのかを具体的に分析して下さい。

 また、同じ客層を狙っている同業者がどんなやり方をしているかも調査し、自社と比較して下さい。

 そうすれば、商品の仕様や品揃え、サービスをどう改善すれば良いのかが見えてきます。

 ここは抽象論ではいけません。徹底的に調査・分析する事が重要です。


差別化が難しい理由 

 何を強化するのかが見えても、それだけでは他社と似たりよったりです。重要なのは差別化の徹底度です。

 差別化に取り組む企業は数多くありますが、差別化に成功する企業は少ないです。なぜなら、企業体質が足枷になるからです。

 現実問題として、営業担当は色々なタイプの既存客を抱えています。ターゲットでない客層や低価格の客層との取引は続いており、売上目標がある以上、それらの客層をないがしろにする訳にもいきません。

 そして、まさに価格破壊者に狙われている客層は、客数や取引規模から言って、営業担当が売上高を稼げる客層であり、売上目標を達成するために重視せざるを得ないのです。

 すると、営業担当の頭の中は、ターゲット客層への提案営業よりも、低価格の客層への価格合わせが優先されてしまいます。

 会社が目指す方向と現場の動きが合っていないのです。


売上高を捨てる事ができるか 

 ここで経営者の決断が必要になります。どんな決断かと言うと、売上高を捨ててでも利益を取る決断です。

 利益を増やすには売上高を増やす必要があるのは確かです。しかし、前提条件があります。

 それは、粗利益率が同じ場合です。

 会社の粗利益は売上高と粗利益率の掛け算です。

 低価格競争で売価が下がると粗利益率が大幅に悪化します。この状態で売上高を多少増やしても、粗利益は増えません。

 むしろ、粗利益率の高い客層にエネルギーを集中し、粗利益率の少ない客層を捨てる覚悟が重要です。

 売上高は一時的に下がります。しかし、どのみち価格破壊者に奪われるのです。それよりも、御社が得意とする客層への販売をどんどん増やしていく方が利益は増えるのです。

 また、目標の立て方も、売上高至上主義は改め、粗利益やターゲット客層の開拓をベースにすべきです。

 その前提として、客層別の粗利益の管理は必須です。計数管理の苦手な会社は生き残れません。

那覇商工会議所報 2014年6月号掲載


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Posted by ikai at 12:00│Comments(0)Q&A
 
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