てぃーだブログ › 中小企業診断士 井海宏通の「経営のヒント」 › ヒント(142) 労働生産性を高めるには(6)

2017年01月17日

ヒント(142) 労働生産性を高めるには(6)

 生産性を高めるには、短時間で成果を出す考え方が重要です。

 残業もいとわず長時間働く事が良しとされた時代も過去には有りましたが、今は違います。

 これは労働者保護の観点だけではなく、会社の競争力を高めるうえでも重要な問題です。


長時間労働の弊害 

 最初に、長時間労働の弊害を整理しておきます。

 まず、人間の気力や体力には限界があります。

 それを超えて働くと疲れが溜まり、仕事のスピートが落ちたり、ミスが増えたりします。つまり、仕事の生産性が下がります。

 疲労が蓄積すると、体調を崩して休職や退職する従業員も出てきます。本人にとっても痛手ですが、会社としても業務に穴が空きます。

 毎日残業するのが当たり前の職場では、ダラダラ働く人もいるでしょう。集中力が低いため、業務の効率だけでなく質も下がります。

 また、人材不足の状況では、残業が当たり前で休みも取りにくい会社は、若い人材や女性の採用に苦労します。

 それだけではありません。社員が朝から晩まで業務に追われると、帰宅後に自己研鑚をする余裕が有りません。

 一般的に、立場が上になればなるほど、幅広い知識や教養が必要とされます。オフの時間に勉強する習慣がないと、人材としての伸びしろが限られてしまいます。

 そして何よりも、残業手当は会社にとって大きな負担です。


残業が減らない背景 

 残業は、ノー残業デーを設けて呼びかける位では減りません。

 物事には必ず原因があるので、それを知る必要があります。

 残業が多い背景として一番大きいのは、長時間労働を評価する組織文化です。

 朝早く出社し夜遅くまで残業する社員を「よく頑張っている」と評価する空気の強い会社では、多くの社員が「頑張って」残業します。

 本来、仕事は成果で評価するものです。極端な成果主義だと弊害もあるので、成果を出すための過程も評価すべきでしょう。

 この「成果を出す過程」とは、長い時間を掛ける事ではありません。技能を磨き、創意工夫し、仕事の質を高め、種まきの量を増やす事です。同じ仕事なら短い時間で仕上げる方が良いに決まっています。

 頑張っている人とは、成果を出す人です。しかも、限られた時間で成果を出す人です。そして、その為に自己研鑚や創意工夫を続けている人です。決して残業の多い人の事ではありません。

 残業の多い会社は、部下や同僚を見る目(評価基準)から変えていく必要があります。


経営課題として取り組む 

 残業の削減は、現場任せでは不可能です。なぜなら、単純に勤務時間だけを削減すると、営業目標や納期などにしわ寄せが来るからです。

 言い換えると、残業を積極的に削減するメリットが、現場の責任者には無いのです。

 したがって、残業の削減は、会社の経営課題としてトップダウンで取り組むべきです。

 まず、会社として残業時間と残業手当を部門別に集計します。実態を数字で見る事が大切です。

 残業の多い部門には、経営陣から直接、削減を指示して下さい。ある程度の強制力は必須です。

 そして、業務フローや役割分担などの見直しが必要です。何が仕事の効率を下げているのか、一つ一つ洗い出して対策していきましょう。

 残業の手続きを煩雑にする事も効果が有ります。書面による事前申告制を義務付ける事で「気軽に」残業する雰囲気が解消されます。


那覇商工会議所会報誌 2017年1月号掲載



Posted by ikai at 19:19│Comments(0)
 
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