てぃーだブログ › 中小企業診断士 井海宏通の「経営のヒント」

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Posted by TI-DA at

2017年03月16日

ヒント(144) 経営者の仕事とは

 企業が成長するか衰退するかは経営者で決まります。

 経営者が「なすべき事」を正しく認識し実践すれば、会社は伸びますし、さもなければ、会社の業績は景気によって浮き沈みします。

 そこで、経営者の仕事とは何かを確認しておきます。

 これらは、必ずしも経営者自身が実施する必要はなく、管理職に任せるべき項目もあります。しかし、最終責任は経営者にあります。


①経営方針の策定
 企業理念を明確にし、会社が目指す将来像(ビジョン)を具体化します。それを達成するシナリオを経営戦略(方針)として定め、経営計画に落とし込みます。計画は従業員に周知徹底のうえ進捗管理をします。

②経営課題の解決
 事業環境の変化を正しく認識し、自社の強みと弱みも踏まえて、解決すべき経営課題を整理します。問題が起きた場合は、根本原因を分析のうえ、抜本的な対策を立てて実行します。

③投資判断
 企業成長のために、設備投資やシステム導入、新事業立ち上げ、M&Aなどをします。投資対効果や財務的な安全性を計算し、最終的な決断を下します。コスト削減をしつつ、集客や人材の確保・育成に予算を掛けるメリハリをつけます。

④撤退・縮小の判断
 不採算事業(店舗)があれば撤退、統廃合、売却をします。必要があれば人員削減も実施します。重い決断ゆえに経営者でしかできません。判断材料として、事業別や店舗別の損益資料は必須です。

⑤資金調達と返済
 事業に必要な資金を調達します。基本は借り入れですが、出資が可能ならそれも検討します。金融機関や株主との長期に渡る関係づくりも大切です。

⑥財務体質の改善
 キャッシュフロー(資金繰り)を改善します。売掛金や在庫の圧縮、遊休資産の売却などをします。節税と内部留保のバランスも重要です。

⑦商品力の強化
 商品の開発、発掘、改良によって商品の魅力を高めます。品揃えも重要です。モノで差別化しにくい場合はサービスで差別化します。対象客層の明確化とニーズの把握が土台になります。また、技術力や品質の向上も必要です。

⑧販売力の強化
 集客と営業の予算確保と体制作りをします。営業現場には、数値目標だけでなく達成方法まで周知します。また、顧客を囲い込む仕組みを構築します。

⑨収益性の強化
 適正価格と原価削減によって利益率を高めます。業務効率化も含めて労働生産性を高め、給与水準を向上させます。計数管理やシステム導入、情報管理などが必要です。

⑩組織体制の強化
 組織づくりは経営者の最重要任務です。会社の方針に合わせて部門編成と幹部人事を最適化し、役割分担(業務分掌)を明確にします。日常の業務報告とは別に、会社の方針と課題を共有し協議する経営会議も主催します。

⑪人事制度の改善
 給与体系と評価制度を整備します。また、人材の獲得と育成の計画も立てて実施します。職場環境や福利厚生も充実させ、仕事に対する意識付けもします。

⑫事業承継
 次世代の経営者と幹部を発掘し育成します。連帯保証人や税金などがネックにならないような対策も必要です。後継者が見つからない場合は、事業譲渡を検討します。

※経営のヒントは今回で最終回となります。連載開始から12年間、ご愛読頂き有難うございました。


那覇商工会議所会報誌 2017年3月号掲載  


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2017年02月17日

ヒント(143) 労働生産性を高めるには(7)

 営業担当を何人も抱えている会社では、営業効率の向上が課題です。

 少ない人数で多くの粗利益を確保すれば会社は儲かりますし、その反対だと赤字になります。

 営業担当者一人あたりの粗利益は、重要な経営指標の一つです。


営業成績に個人差が有る理由 

 多くの場合、個人別の営業成績にはばらつきがあります。

 まず、営業には向き・不向きがあります。例えば、顧客との会話に苦手意識を持つタイプは営業には向きません。また、性格が外交的でも、相手の言う事を理解する力が乏しい人は営業には向きません。

 新人でもないのに営業成績が悪い人は、そもそも営業に向いていない可能性があります。

 営業に向いている人同士でも、営業能力によって差がつきます。

 まず、「商品知識」の違いがあります。自社の全商品を熟知し、競合商品との違いも含め、聞かれた事を何も見ないで即答できる人は、そうでない人に比べて成約率に大きな差がつきます。

 商品知識が中途半端だと核心をつく提案ができませんし、何よりも顧客から頼りなく思われてしまいます。

 また、「傾聴力」の差もあります。顧客が求めている事を正しく理解せずに商品を提案しても、ピント外れになります。

 顧客が言っている事と顧客が求めている事はイコールとは限りません。相手の発言の背景を見抜く事が何より重要で、そのためには質問力と理解力が必要です。

 どれだけ流暢なトークができても、「この人は分かってないな」と顧客に思われた時点で商談は成約しないのです。


誰に対して営業をするか 

 営業能力が同じでも、会社のマーケティング力によって成果は異なります。

 商談が成立するのは、顧客ニーズと商品が合致した時です。

 顧客によってニーズが異なる以上、提案する商品も顧客ごとに違ってくるのが当然です。

 しかし、提案の幅が広すぎると、提案に時間を要する割に成約率が低くなります。

 本来、会社には得意分野があり、それらを軸に商品やサービスを組み立てています。つまり、「自社に合った客層」があります。

 営業効率の悪い会社や担当者は、とにかく「接点のある相手」に提案しようとします。

 しかし、自社に合った客層でなければ、会話はできても提案が心に響きません。ニーズもバラバラですので、毎回ゼロから提案を組み立てる事になり、時間も掛かります。

 効率の良い会社は、営業の前段階として集客に力を入れます。つまり、「自社商品を欲しがる相手」を広告や紹介などで集めるのです。

 顧客ニーズはバラバラですが、大抵は一定の範囲に収まりますので、提案をパターン化しやすく、効率や成約率が高くなります。

 商談は「会える人」ではなく「欲しがる人」とすべきです。


営業には武器が必要 

 営業活動にはツールが必要です。

 百聞は一見に如かず、の分野ではサンプルや動画を顧客に見せた方が効果的です。

 多くの顧客から質問される内容は、会社のウェブサイトに事例やQ&Aを掲載する方法もあります。

 価格見積りや納期確認は、商談の場でできた方が効率的です。

 顧客は、不明点を早く解消したがるものです。また、そうした方が早く次の段階に進めるのです。

 また、商談や取引の履歴を一元管理し参照できる仕組みも必要です。

 必要なツールを会社が整備し、営業担当者が使いこなせるようにすれば、営業効率が一層高まります。


那覇商工会議所会報誌 2017年2月号掲載  


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2017年01月17日

ヒント(142) 労働生産性を高めるには(6)

 生産性を高めるには、短時間で成果を出す考え方が重要です。

 残業もいとわず長時間働く事が良しとされた時代も過去には有りましたが、今は違います。

 これは労働者保護の観点だけではなく、会社の競争力を高めるうえでも重要な問題です。


長時間労働の弊害 

 最初に、長時間労働の弊害を整理しておきます。

 まず、人間の気力や体力には限界があります。

 それを超えて働くと疲れが溜まり、仕事のスピートが落ちたり、ミスが増えたりします。つまり、仕事の生産性が下がります。

 疲労が蓄積すると、体調を崩して休職や退職する従業員も出てきます。本人にとっても痛手ですが、会社としても業務に穴が空きます。

 毎日残業するのが当たり前の職場では、ダラダラ働く人もいるでしょう。集中力が低いため、業務の効率だけでなく質も下がります。

 また、人材不足の状況では、残業が当たり前で休みも取りにくい会社は、若い人材や女性の採用に苦労します。

 それだけではありません。社員が朝から晩まで業務に追われると、帰宅後に自己研鑚をする余裕が有りません。

 一般的に、立場が上になればなるほど、幅広い知識や教養が必要とされます。オフの時間に勉強する習慣がないと、人材としての伸びしろが限られてしまいます。

 そして何よりも、残業手当は会社にとって大きな負担です。


残業が減らない背景 

 残業は、ノー残業デーを設けて呼びかける位では減りません。

 物事には必ず原因があるので、それを知る必要があります。

 残業が多い背景として一番大きいのは、長時間労働を評価する組織文化です。

 朝早く出社し夜遅くまで残業する社員を「よく頑張っている」と評価する空気の強い会社では、多くの社員が「頑張って」残業します。

 本来、仕事は成果で評価するものです。極端な成果主義だと弊害もあるので、成果を出すための過程も評価すべきでしょう。

 この「成果を出す過程」とは、長い時間を掛ける事ではありません。技能を磨き、創意工夫し、仕事の質を高め、種まきの量を増やす事です。同じ仕事なら短い時間で仕上げる方が良いに決まっています。

 頑張っている人とは、成果を出す人です。しかも、限られた時間で成果を出す人です。そして、その為に自己研鑚や創意工夫を続けている人です。決して残業の多い人の事ではありません。

 残業の多い会社は、部下や同僚を見る目(評価基準)から変えていく必要があります。


経営課題として取り組む 

 残業の削減は、現場任せでは不可能です。なぜなら、単純に勤務時間だけを削減すると、営業目標や納期などにしわ寄せが来るからです。

 言い換えると、残業を積極的に削減するメリットが、現場の責任者には無いのです。

 したがって、残業の削減は、会社の経営課題としてトップダウンで取り組むべきです。

 まず、会社として残業時間と残業手当を部門別に集計します。実態を数字で見る事が大切です。

 残業の多い部門には、経営陣から直接、削減を指示して下さい。ある程度の強制力は必須です。

 そして、業務フローや役割分担などの見直しが必要です。何が仕事の効率を下げているのか、一つ一つ洗い出して対策していきましょう。

 残業の手続きを煩雑にする事も効果が有ります。書面による事前申告制を義務付ける事で「気軽に」残業する雰囲気が解消されます。


那覇商工会議所会報誌 2017年1月号掲載  


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2016年12月17日

ヒント(141) 労働生産性を高めるには(6)

 会社組織が大きくなると会議が増えます。また、プロジェクト型の仕事でも顧客や関係者との会議があります。

 そして、会議が多くなるほど、本来の業務に費やす時間が圧迫されます。

 会議の持ち方は労働生産性に影響します。したがって、会議は効果的かつ効率的に実施しなければなりません。


報告だけの会議は無駄 

 会議には人件費が掛かります。参加者が多いほど、時間が長いほど、会議に掛かる人件費が大きくなります。問題は、それに見合った成果が有るかどうかです。

 報告だけの会議はその典型例です。業務報告は部下から上司に一対一するもので、皆が集まった場で行う事ではありません。

 しかも、事前に報告書を作成するでもなく、口頭だけで全てを済ませるケースでは、各自の報告だけでも相当の時間を要します。

 必然的に、会議が長時間になり、しかも、報告で明らかになった問題点の掘り下げも浅くなります。

 会議は「会って協議する」と書きます。話し合いをする場です。特定の議題(テーマ)について参加者全員で活発に意見交換し、最終的に物事を決めるのが会議の目的です。

 報告で言えば、報告自体を会議でするのではなく、日々の報告から浮かび上がった課題を会議で協議する事が大切です。

 業務報告は会議以外の手段で実施すべきで、それを会議で行うのは、報連相の体制が弱いからです。


参加人数を絞る 

 会議は協議するのが目的ですから、参加人数への配慮は必要です。

 参加人数が多すぎると議論が浅くなります。それは一人あたりの発言時間が短くなるからだけではありません。

 ほとんどの人は、自分以外の参加者の顔色、立場、知識に配慮して発言します。参加者が多いほど、配慮すべき相手が増え、発言できる内容の幅が狭くなります。

 つまり、参加者が多ければ多いほど、発言が表面的になりやすく、ついては会議が形式的になりやすくなります。

 また、そんな会議に付き合わされる人の時間も馬鹿になりません。

 したがって、会議の参加者はできるだけ絞るべきです。

 特に、会議で何も発言しない人は、協議には必要ありません。会議室に座っている時間が有るなら、現場で業務をすべきなのです。


資料は事前に配付する 

 会議の資料は事前配付が必須です。会議が始まってから資料を渡されても、参加者には内容を十分に理解する余裕も自分の意見を組み立てる時間も有りません。

 読めば分かる資料をいちいち読み合わせるのも時間の無駄です。

 会議の議題と資料は、参加者全員に事前配付するのが基本です。

 そして、参加者は資料を読み込んで理解し、自分なりに調査や分析をしたうえで、質問や意見を準備して会議に臨まねばなりません。

 各自がここまでやって初めて、会議の内容が濃く(効果的かつ効率的に)なります。


会議の着地地点を想定する 

 会議での協議には意図が必要です。単なる自由討論だと、各自が言いたい事を言って終わりです。

 会議では協議の結果として、何かを決める事が大切です。

 その為には、会議の発起人が「今回はこれについてここまで決めよう」と会議の着地地点を想定したうえで、臨む必要があります。

 会議資料も事実の記述に留まらず、「今後どうしたいのか」の意図を「たたき台」として示す必要があります。その際、選択肢を複数準備すると議論が深まります。


那覇商工会議所会報誌 2016年12月号掲載  


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2016年11月16日

ヒント(140) 労働生産性を高めるには(5)

 労働生産性、すなわち「従業員一人あたりの利益」を高めるには、ミスやクレームの削減も大切です。

 ミスやクレームが多いと、会社の利益を損なうだけでなく、対外的な信用を失ったり、当事者のモチベーションが下がったりします。

 ミスやクレームへの反省から学べる事も有りますが、予防するに越した事はありません。


クレーム対策をしているか 

 顧客からのクレームが有った場合、会社は2つの事をしなければなりません。対応と対策です。

 クレーム対応とは、顧客に謝罪して補償(商品交換、追加作業、値引きなど)をする事です。これをしない会社はまず存在しないでしょう。

 一方で、クレーム対策とは、クレームの原因を分析し再発防止策を講じる事です。似たようなクレームの発生予防も含みます。

 クレーム対策の実施度は会社によって大きな差があります。

 本人に注意して終わり、というのは対策とは言えません。しばらくして別の従業員が同様のクレームを起こさせるかも知れないからです。

 重要なのは、会社として同じクレームが二度と起きないようにする事です。

 また、再発防止策は具体的でなければなりません。「気をつけなさい」「注意しなさい」だけでは、忘れた頃に同じ問題が起きます。

 一つのポイントは5W1Hです。いつ、どこで、誰が、何を、どのように確認するのか、そして、それはなぜなのか、ここを明確にする必要があります。

 クレームには対応と対策がある。この事をよく理解して下さい。


ミスを防止するには 

 クレームになるかどうかは別として、ミスを防止する事は労働生産性を向上させるうえで大切です。仕事で最も生産性を損なうのは、ミスやトラブルの後始末だからです。

 ミスの防止で大切なのは、「フールプルーフ」と「フェイルセーフ」という二つの考え方です。

 「フールプルーフ」とは、元は「機械の誤操作を防ぐための設計」を指した言葉ですが、広く解釈すると、「ミスが起きにくい業務環境を作る事」です。前提は「人はミスをする生き物だ」という物の見方です。

 完璧な人間は存在しません。技能不足なら勿論のこと、体調不良や注意散漫によってもミスは起きます。

 大切なのは、多少の技能不足や不注意が有ってもミスが起きにくくなるよう、会社が業務手順や確認体制をどのように構築するか、です。

 例えば、子供が自分の職場で働いていたら、その子がミスをしないよう、どんな対策を立てるでしょうか。それを大人(従業員)に対しても実施すれば良いのです。

 また、「フェイルセーフ」とは、ミスをしてもダメージを最小限に食い止める対策です。セーフティネットと言っても良いでしょう。自動車ならシートベルトやエアバッグみたいなものです。

 フールプルーフでミスを減らす、フェイルセーフでダメージを軽くする。両面の対策が必要です。


対策を習慣化するために 

 ミスやクレームの対策は、口頭で一度や二度注意しただけでは定着しません。口で言うなら何十回も言い続ける根気強さが必要です。

 対策の定着化に必要なのは、システム化とマニュアル化です。

 一番確実なのは、情報システムで業務手順の型を作ってしまう事です。大企業はこれをしています。ITの威力は、効率化よりも、むしろ「仕組み作り」にあります。

 システム化が難しい場合は、ミスやクレームの対策をマニュアル化して、レベルの底上げをしましょう。特に新人には有効です。

 あとは整理整頓です。これが苦手な会社はミスも多いです。


那覇商工会議所会報誌 2016年11月号掲載  


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2016年10月18日

ヒント(139) 労働生産性を高めるには(4)

 労働生産性、すなわち「従業員一人あたりの利益」を高めるには、短い時間でより多くの利益を稼ぐ考え方が大切です。

 時間の短縮には業務効率の向上が必須ですが、それだけではありません。営業や企画なども含めた事業全体の効率を高めないと労働生産性は高まりません。

 つまり、事業モデルの最適化が問題になります。


苦手分野には手を出さない 

 個人の職種には適性があります。営業が得意な人には営業、事務が得意な人には事務をさせるのが原則です。企画のできない人に企画の仕事をさせても、時間が掛かる割には大した成果を出せません。

 それと同じく、企業が手掛ける事業にも向き・不向きがあります。 自社の組織文化、技術力、ノウハウ、販路や調達先などによって、得意分野や苦手分野が決まってきます。

 自社の得意な事業は効率的に利益を得る事ができる一方、苦手分野は頑張っても効率が悪く、利益を出しにくいのが現状です。

 現場が一生懸命頑張っているのに同業他社よりも収益性が低いのは、御社にとって苦手分野だからかも知れません。

 事業環境には良し悪しがあります。ある分野が最近伸びているからと言って、自社が得意でもない事業に安易に手を出すのは弊害が大きいです。

 その事業で苦戦するだけではありません。企業規模に対して事業の数が多すぎると、経営資源(人・物・金)が分散して、得意分野たる中核事業まで弱体化しがちです。

 事業は自社の得意分野に絞る事が大切です。


固定収入の仕組みを作る 

 毎月の売上高が安定しないと繁忙期と閑散期の差が激しくなり、労働生産性が悪化します。

 社員数は閑散期に合わせて繁忙期はパートやアルバイトなどで乗り切るのが理想です。

 しかし、実際には多くの会社が繁忙期に合わせて人員を揃えているので、繁忙期以外では、どうしても人員過剰になります。

 特に、受注型の業種では売上高の波が大きくなりやすく、また、集客や営業活動に掛かるコストも馬鹿になりません。

 そこで、事業モデルとしては、安定収入が得られる仕組みを作る事になります。その際のキーワードは「囲い込み」と「紹介」です。

 まず、顧客との取引は一過性であってはいけません。それだと、営業活動の効率が悪くなります。継続的な取引を確立し、リピーターとして囲い込まなければなりません。


紹介による新規取引を 

 次に、紹介による受注を増やす事が大切です。

 広告宣伝費の削減効果だけではありません。紹介を受けた事により、最初から好印象を持って貰えるため、成約率も高くなります。

 紹介を増やすには、顧客満足の向上に加え、紹介しやすくなるような自社の特徴付けが必要です。

 具体的にどのようなセリフで自社を紹介して貰うのか、予め考えておいた方が良いでしょう。


仕事の粒を小さくしすぎない 

 「規模の利益」という言葉がありますが、一般的に事業や仕事は大きいほど効率が良くなります。

 裏を返せば、業務の粒が小さいと効率が悪くなります。

 少額の取引、小ロット生産、小口配送などは、時間が掛かる割には利益額が少なく、労働生産性が低くなりがちです。

 効率の悪さに見合った高めの代金を貰えるなら別ですが、そうでなければ、顧客構成や商品構成の見直しも必要です。

 その判断材料は数字です。やはり計数管理は重要です。


那覇商工会議所会報誌 2016年10月号掲載  


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2016年09月16日

ヒント(138) 労働生産性を高めるには(3)

 労働生産性、すなわち「従業員一人あたりの利益」を高めるには、時間を効果的かつ効率的に使う必要があります。

 効果と効率は意味が異なります。効果は「目的に適った結果」を指し、効率は「掛けた労力に対する仕事のはかどり具合」を指します。

 両者を混同してはいけません。


時間を効果的に使う 

 効果と効率とでは、効果の方が重要です。なぜなら、全ての仕事(業務)には、目的が有るからです。

 その仕事に意味が有るか無いかは目的次第で、目的が無い仕事や目的を満たせない仕事は無意味、つまり無駄という事になります。

 企業は、顧客の期待と満足から利益を得ます。その為には、良い商品やサービスを生み出し、顧客に提供しなければなりません。それが仕事の目的になります。

 しかし、目の前の業務が会社の利益に直結するとは限りません。

 「良い商品」と言っても、「顧客にとっての良さ」で無ければ売れません。売れても低価格です。顧客が求めていない商品やサービスに原価や時間を掛けても報われない努力です。

 要するに、客層と商品コンセプトがマッチしてないと、仕事が効果的にならないのです。

 また、顧客満足が利益を生むとも限りません。会社の強みと客層が合ってないと、他社との競争で苦労します。苦労するという事は、時間(人件費)を消耗するという事です。

 自社の得意分野でなく苦手分野でわざわざ勝負するのも無駄な努力です。

 そして、自社の強み、客層、商品コンセプトが揃っていても、一つ一つの作業に目的が無ければなりません。つまり、惰性でやっている仕事はやめなければなりません。

 例えば、意味のない会議、誰も見ない資料作成、自己満足的な商品開発などです。

 効率性は有効性(効果の有る事)が満たされて初めて意味をなします。


時間を効率的に使う 

 効率を高めるには、いくつか必要な要素があります。

 まずは、技能です。

 最低限の技術、知識、経験が無ければ仕事の効率が悪いのは御存じだと思います。問題は、従業員の技能を高める企業努力を他社以上に実施しているのか、という事です。

 新人教育はどの会社でも実施します。では、新人以外はどうでしょうか。技能が中途半端だったりしないでしょうか。

 次はインフラです。

 経営資源は「ヒト・モノ・カネ」であって「ヒト・カネ」ではありません。つまり、ヒトだけでは仕事はできません。ヒトがモノを使って仕事をするのです。

 業務を効率的に行うには、設備や備品などを揃え、業務の自動化や高速化を計らねばなりません。設備投資が必要です。

 そして、ITの活用は避けて通れません。情報システムの弱い会社は概して効率が悪いです。

 効率的な業務には、インフラ(基盤)が必要です。

 三つ目は分業体制です。

 従業員の役割分担は適材適所でなければなりません。仕事は、本人の得意分野に特化し、苦手業務は別の人が担う方が効率的です。

 また、分業した作業を一つの仕事としてうまく統合できるかどうかが重要です。マネジメントや業務フローがポイントとなります。

 あとは標準化です。

 全く同じ仕事は無いとは言え、仕事を一つ一つの作業(部品)に分解すると似ています。

 作業手順を標準化して「慣れ」でスピードを速めつつ、作業の組み合わせによって多様なニーズに応えていくのが賢い方法です。


那覇商工会議所会報誌 2016年9月号掲載  


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2016年08月17日

ヒント(137) 労働生産性を高めるには(2)

 労働生産性、すなわち「従業員一人あたりの利益」を高めるには、時間の概念が重要です。なぜなら、一人あたりの勤務時間が限られているからです。

 限られた時間でより多くの成果を出す事が労働生産性の向上に繋がります。


まずは稼働率の向上 

 設備(モノ)には「稼働率」の概念があります。設備がフル稼働の何%使用されているかを示す概念です。勿論、稼働率が高いほど収益が増えます。

 それと同じく、従業員(ヒト)の仕事にも稼働率があります。全ての勤務時間に対する、直接利益を生む業務をしている時間(稼働時間)の占める割合が、人員の稼働率です。設備と同様、稼働率が高いほど、収益が高まります。

 分かりやすいのは現場作業者で、現場に携わっている時間が勤務時間の7割なら稼働率は7割です。残り3割は、掃除や事務などです。

 掃除も必要と言えば必要ですが、掃除をいつもの3倍やっても収入が3倍になる訳ではありませんので、稼働時間には含めません。

 仕事量に波がある会社では、稼働率が高い時期と低い時期があります。年間を通じて稼働率が低いと、労働生産性が低い、つまり、収益が少なく人件費の重たい会社になります。

 繁忙期に合わせて人員を揃えていると、閑散期に人手が余り、稼働率が低くなりがちです。繁忙期と閑散期の中間位でバランスを取り、繁忙期は外注などで対応する方が、収益性が高まります。

 また、繁忙期に業務が集中しないように、仕事を分散する取り組みも重要です。


持ち時間を決める 

 稼働率が高い、つまり、利益を生む業務に携わる時間が増えたら、次は効率が問題になります。

 いくら現場に携わっている時間が長くても、必要以上に時間を掛け過ぎると、こなせる仕事量が少なくなって、労働生産性が悪化します。

 仕事では、納期を守る事が重視されますが、納期さえ守れたらそれで良い訳ではありません。

 同じ時間で多くの仕事をこなすには、一つの仕事に掛ける時間に上限を設ける事が大切です。つまり、仕事には「持ち時間」があり、持ち時間の範囲内で仕事を完成させなければなりません。

 これは、作業だけでなく、営業や事務においてもそうです。決められた時間内で業務をこなす習慣が必要です。

 プロの仕事に質が求められるのは当然ですが、量も求められます。両方揃って初めてプロであり、片方しかないのはアマチュアです。

 業務の一つ一つに持ち時間を決めて取り組む事によって、限られた時間で多くの仕事(出来高)をこなす事が出来るようになります。


合格点を量産ができるか 

 仕事に対する意識が高い人が陥りがちな落とし穴として「完璧さを求めすぎる」という事があります。

 勿論、質の追求は結構な事です。問題は時間を掛け過ぎる事です。

 仕事の質を決めるのは顧客です。顧客が求める水準をクリアすれば、仕事としては合格です。

 合格点を取った後にすべき事は、「次の仕事」で合格する事です。今の仕事で点数を更に積み上げる事ではありません。

 勿論、顧客が仕事の質の上乗せに対して対価を追加で支払ってくれるなら別です。しかし、そうでなければ、仕事をする人の自己満足でしかありません。

 この点は従業員が個人で判断するのではなく、会社として基準を決める事が重要です。仕事の質は、不足しても過剰であっても駄目なのです。


那覇商工会議所会報誌 2016年8月号掲載  


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2016年07月19日

ヒント(136) 労働生産性を高めるには(1)

 会社の収益性を高めるうえで、切っても切れない関係にあるのが労働生産性の向上です。

 労働生産性とは「従業員一人あたりの稼ぎ」の事ですが、労働生産性が低いと「現場は忙しいのに会社は儲からない」という状況になります。

 労働生産性が重要なのは、多くの企業では、仕入や外注を除くと人件費が最も大きな費用だからです。

 そして、更に問題なのは、労働生産性は給与水準に直結する点です。


労働生産性が低いと人材難に 

 従業員の定着率は、職場環境や業務負荷にも影響されますが、給与水準に大きく影響されます。

 そのため、給与水準の低い会社は、人材の流出に悩まされます。

 従業員の離職は、会社の競争力を低下させます。まず、離職者の穴は新人で埋めるため、人件費がかさんだり、業務効率が下がったりします。

 そのうえ、顧客や業者との繋がりを持つ社員が退職すると、会社が持つネットワークが弱体化します。

 また、有効求人倍率が高い時期は、多くの会社が経験されている通り、人材募集をしても応募が少なく、なかなか従業員を補充できません。

 待遇条件を多少上げた所で、他社はもっと上げていますので焼け石に水です。しかし、既存従業員の手間、新人の給与をあまり高く設定できないのも、ご存じの通りです。

 結局は、会社全体の給与水準を上げるしかないのですが、単純に給与水準を上げても会社の利益が無くなるだけです。収益性の向上とセットでなければなりません。


売上高が増えると人も増える 

 収益性の向上と言えば、売上高の増加を考える経営者が多いと思います。勿論、費用が全く変わらずに売上高だけが増えれば、収益性は良くなります。

 しかし実際は、売上高だけが増える事はありません。

 売上高が増えると、業務量が増えます。業務量が増えると、単純に人手が不足します。

 それだけではありません。売上高を増やすには、営業担当者の増員も必要です。

 提案営業をすれば、受注が増える代わりに提案内容を実施する付帯業務が発生します。つまり、業務が細かく複雑になります。

 スピード対応をすれば、飛び込み受注が増えます。ここでも業務が複雑になります。管理の手間も増えてくるでしょう。

 そのため、現場は「人が足りない」と悲鳴を上げます。そして、従業員を増やします。

 売上高が増えて従業員数が増えれば、会社は大きくなります。しかし、収益性が付いてきているでしょうか。給与水準を上げつつ、会社の利益も増えているでしょうか。


一人あたりの数字を追求する 

 売上高が増えても、従業員も同じ割合で増やすと、割り算すると「一人あたりの売上高」は同じです。

 値引販売などで利益率が下がっているなら、売上高増加に反して「一人あたりの利益」は減ります。

 これでは会社に利益が残りませんし、給与水準を上げる余力もありません。

 経営者は会社の色々な数字を見なければなりませんが、労働生産性は特に重要な指標です。

 特に、売上高が増えているのに利益が少ない、資金繰りが厳しい、という会社は、労働生産性が低い可能性が大です。

 労働生産性を上げる具体策は次回以降に解説しますが、まずは、自社の「一人あたりの稼ぎ(利益)」を把握し、数値目標を立てる事がスタートになります。

 現場の忙しさは、本来、利益と給与に正比例します。その「本来」が崩れているのであれば、労働生産性の観点で、何かしらの問題があります。ここにメスを入れましょう。


那覇商工会議所会報誌 2016年7月号掲載  


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2016年06月18日

ヒント(135) 営業力を強化するには(15)

 売上高は商品力と販売力の掛け算で決まります。そして、商品力と販売力とでは、商品力が先に来ます。

 商品力が弱いままで売上高を伸ばすのは、かなり苦戦します。顧客が欲しがる商品やサービスであって初めて、それを顧客に宣伝し提案する販売力が活かされます。

 今回は、商品力という視点で営業力の強化を見ていきます。


商品力は商品だけで決まらない 

 顧客が皆欲しがり、かつ他社では扱えない商品が有れば、売上高を増やすのは簡単です。

 しかし、そんな商品が有れば、そもそも営業担当者は要りません。誰もが飛びつくオンリーワン商品は中々作れないのが実情でしょう(勿論、それを目指す事は大切です)。

 むしろ、ハードルが低いのは、顧客に合わせた「特注商品」や「きめ細かなサービス」など、対応力での勝負です。

 顧客が抱える課題を正確に把握し、それを解決する商品やサービスを提案する、いわゆる提案営業の分野です。

 商品力を「顧客の欲求を満たしたり課題を解決したりする力」と定義すると、商品(モノ)だけでは狭く、対応力も含めて考える必要があると分かられると思います。

 そして、対応力の部分で営業担当者の力量が問われます。


社内調整力が重要 

 顧客と接するのは主に営業部門ですが、対応力を生みだすのは非営業部門(生産、作業、設計、施工など)です。

 つまり、営業担当者が顧客からの特別な要望に応えるには、非営業部門の協力が不可欠ですが、ここでの調整がうまく行かないケースが多々あります。

 顧客から要望には、例えば、特殊商品、取寄せ、小ロット多頻度納品、短納期生産、アフターサービスなどがあります。営業担当者としては当然、積極提案したい内容です。

 しかし、これらの要望に対応しようとすると、非営業部門に負担が掛かります。要するに「非効率」なのです。また、「高コスト」です。そして、嫌がられます。

 ここを何とかしない限り、対応力を高める事ができません。

 営業担当者は、自社の(つまりは非営業部門の)業務をよく知り、社内人脈を強化し、きめ細かな顧客対応の為に調整力を発揮しなければならないのです。


会社としての仕組みづくりを  

 以上は営業担当者の話です。ここからは組織の話です。

 先ほど述べた通り、会社として対応力を高めるには、非営業部門の負担感を解決しかければなりません。

 それにはまず、営業部門と非営業部門の話し合いの場を多く設ける事が必要です。

 会話が足りないと、互いの立場を配慮する事ができず、社内対立が起きやすくなります。協議の場を多く持つ事で、営業部門と非営業部門との間で、現実的な方法を見出しやすくなります。

 また、互いの計画を共有する事も必要です。

 非営業部門は販売計画を知っておかねばなりません。また、営業部門は、非営業部門の生産計画または作業計画を知るべきです。

 相手の予定を知っておくことで、社内調整がしやすくなります。


社内の業務レベルを上げる  

 顧客にきめ細かく対応しようとすれば、どうしても作業負担が生じ、ミスも起きやすくなります。

 しかし、だからこそ、他社が簡単には真似できない仕組み作りのチャンスでもあります。

 業務レベルを上げ、高度な要求に応えられるようになれば、顧客の囲い込みは難しくありません。問題点を地道に潰していく努力が、会社としての販売力向上に繋がります。


那覇商工会議所会報誌 2016年6月号掲載  


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2016年05月18日

ヒント(134) 営業力を強化するには(14)

 従業員数が多くなると組織作りが課題になってきます。そして、組織体制の弱さを嘆く経営者から事情を伺うと、一つの共通点が浮かんできます。

 それは、社内のコミュニケーション不足です。

 これは、営業体制についても当てはまります。営業力の弱い会社は営業担当者が各自バラバラに動いており、社内の会話量が不足しています。


営業会議だけでは不十分 

 営業担当者に方針を伝え、情報共有し、物事を協議する場として、営業会議が多くの会社で定例実施されています。

 勿論、会議は大切です。しかし、万能ではありません。

 会議は、それ自体に欠点があります。それは、会話の浅さです。

 一対一だと言えても、会議の場では言いにくい事はたくさんあります。他の参加者の目があるため、本音での発言がしにくいのです。

 実際、参加者が多くなればなる程、会議での発言は表面的になり、全く発言しない人も増えます。

 そこで、営業会議に加え、個人面談が必要になります。一対一であれば、より本音に近い会話がしやすくなり、会議の場には適さない個別事案の話し合いもできます。

 また、上司と部下の距離が近くなれば、モチベーションも上がります。


個人面談で何を話すのか 

 営業担当者との個人面談には資料が必要です。例えば、売上高や粗利益の営業成績の数字や顧客一覧、商談状況などです。

 これらを元に、現状報告と今後の見込を共有し、問題があれば、原因と対策を協議します。

 また、担当者が困っている事があれば、上司は相談に乗ります。

 個人面談では、上司から部下への一方的な指示や聞き取りに終始せず、双方向の会話を成立させる事が大切です。

 特に、営業成績が振るわない担当者については、どのような壁にぶち当たっているのかをよく聞いたうえで、対策を一緒に考え、次の一歩を具体的に決める事が大切です。

 営業担当者は会社の外では孤独です。上司が部下をしっかりと支えなければなりません。


形式に拘わる必要はない 

 個人面談は表面的な会話では効果が乏しいので、できるだけ本音で話せるような工夫が必要です。

 面談と言っても、二人で会話するだけですので、必ずしも会議室で向き合って話す必要もありません。

 立ち話でも結構ですし、同性同士なら食事をしながらでも問題ありません。むしろ、こちらの方が力を抜いて気軽に話ができるでしょう。

 面談の時間や頻度も臨機応変に変えて大丈夫です。

 問題がなければ、頻繁に面談する必要はありませんし、必要があれば、毎日でも話をすべきです。

 大切なのは、部下が抱えている問題を上司が発見し、解決の道筋をつける事です。あまり形式に拘ると効果が薄れます。


管理者の責任を全うする 

 営業責任者は、担当者の仕事を管理するのが仕事ですが、管理とは現状把握とイコールではありません。

 現状を把握したうえで、改善していく所までが「管理」です。

 つまり、部下の仕事をレベルアップする責任が上司にはあります。

 その意味で、個人面談は忙しい時でも時間を見つけて実施する事が大切です。

 そもそも、営業は忙しさと成績が必ずしも連動しないものです。バタバタと走り回っていても、やり方が下手だと成果がでませんし、そのうちに疲れ意欲が薄れます。

 だからこそ、上司と部下が一度立ち止まって、方向性や方法論を見直す会話が重要なのです。


那覇商工会議所会報誌 2016年5月号掲載  


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2016年04月16日

ヒント(133) 営業力を強化するには(13)

 営業担当者が複数いる会社では、営業会議の持ち方が大切です。

 経営者からの方針伝達や担当者ごとの状況確認は多くの会社で実施されていますが、それだけに留まっていないでしょうか。

 会議は「会って議論する場」であり、目的は「何かを決める事」です。

 会社の売上高や粗利益を増やす為に、関係者が集まって活発に意見交換し、今後の取組事項を具体的に決めて行く事が、中身のある営業会議です。


営業会議には議題が必要 

 会議にはテーマ(議題)が必要です。これが無ければ、何を話し合えば良いのかが分かりません。

 そして、議題は具体的でなければなりません。議題が抽象的だと、一般論や精神論に陥りがちです。

 売上高の増加は抽象的なテーマです。抽象的なので「何とかしなさい」「頑張ります」と言った精神論になりがちです。

 具体策を求めても、思いつきレベルの対策しか出て来ないでしょう。

 これが例えば「商品Xのリピート率を半年以内に3割増やすには何が必要か」「A社のような得意先をあと5社増やすには、どんな商品で戦うべきか」といった議題なら、具体的な意見が出てくるでしょう。

 つまり、営業会議を充実させるには、売上目標を具体的な課題に落とし込んでテーマ設定(議題化)する事が必要です。これは、経営者や管理職に必須のスキルです。


空気が悪くなる理由 

 売上高が低迷している会社は、会議の空気がドンヨリしています。

 営業成績が悪いと、胸を張っては会議に参加しづらいでしょうし、上司からの叱責もあるでしょう。

 ただ、それでも「こうすれば現状を打破できる」という見通しが有れば、前向きな気持ちになれます。

 会議の雰囲気が暗くなるのは、「どうすれば良いのか分からない」という、先行き不透明な思いがあるからです。

 これは参加者、つまり営業担当者個人の責任ではありません。

 具体的なビジョンを示せない経営者ないし管理職の責任です。

 何をすれば良いのか分からない上司が何をすれば良いのか分からない部下達を集めて会議をしても、状況は良くなりません。そのうちに、諦めムードが蔓延します。


何が問題かを突き止める  

 対策を立てる際に絶対に必要なのは、「何が悪いのか」を明らかにする事です。つまり、原因分析です。

 結果には必ず原因があります。売上高の低迷にも原因があります。

 これが分からないと、効果的な対策は出てきません。また、何が問題かを互いに共有していないと、話し合い(会議)が成立しません。

 物事がうまく行かない際、「どうすれば良いか」と反射的に考えてはいけません。「何が悪いのか」と考えるべきなのです。

 原因分析にはポイントがあります。まず「景気が悪い」「価格競争が激しい」など、自分達ではどうにもならない事は除外すべきです。

 業界環境がどうなろうが、伸びる会社と縮む会社があります。

 売上高が低迷するのは、要するに、商品力か販売力のどちらか一方、または両方が弱いのです。

 また、原因は営業部門だけでなく、全社的に議論すべきです。販売力はともかく、商品力は営業部門だけではどうにもなりません。つまり、営業会議は全部門が参加すべきです。これが第2のポイントです。

 そして、原因分析の際は、数字の内訳を推移表で見て下さい。問題点は必ず数字に現れます。商品分類別や客層別の売上月次推移を見るだけでも多くの事が分かります。

 問題点が具体化すれば、具体策も出やすくなります。営業会議に必要なのは具体性です。


那覇商工会議所報 2016年4月号掲載  


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2016年03月17日

ヒント(132) 営業力を強化するには(12)

 固定客を増やすには、商品やサービスへの満足度は勿論ですが、御社と顧客との関係性に対する満足度も必要です。

 長年連れ添った夫婦や古くからの友人のように、「細かい事を説明しなくても分かってもらえる関係」が築けていれば、多少の事では顧客は離れません。

 逆を言えば、少し価格が違うだけで簡単に顧客が他社に流れるのは、関係性が浅いからです。


関係性と理解から生じる 

 企業と顧客との関係性と言っても、結局の所は人間関係です。

 ただ、「仲の良さ」や「友達付き合い」とは趣が異なります。

 一つは、ビジネスである以上、商品やサービスを仲立ちとした人間関係だという事です。

 営業担当者の中には、顧客と仲良くさえなれば受注できると考える人もいますが、顧客に合った商品を分かりやすく提示できなければ、商談は成約しません。

 商品やサービスが顧客の役に立つ前提でなければ、顧客は顧客たりえず、ただの話し相手で終わります。

 そうならないためには、顧客の立場をよく理解し、「顧客が真に求めている事」を知らねばなりません。

 また、顧客側にも、御社は何をどこまでできるのかを分かって貰わねばなりません。

 そのような「相互理解」に基づく人間関係の深さが重要だと言う事です。


複数の社員で顧客に接する 

 もう一つは、一対一の人間関係ではないという事です。

 営業担当者は顧客との接点ではありますが、その後には、生産や作業、事務の担当者が控えています。

 それらの担当者それぞれが顧客をよく理解しないと、会社全体として良い仕事はできません。

 また、顧客も「知っている社員」が多ければ多い程、その会社に親しみを持つ傾向があります。

 つまり、顧客を囲い込むには人間関係の複線化も必要なのです。


営業担当者だけでは限界 

 会社は組織である以上、顧客には組織(役割分担した複数の人々)で対応しなければなりません。

 特に、営業担当者が苦手とする部分を、他の担当者が補う体制が重要です。

 例えば、営業担当者には売上目標があるため、受注後は、その顧客のフォローよりも次の商談に目が向きがちです。

 また、目標は月次で立てる事が多いため、どうしても目線が短期的になります。長期的視野に立った種まきは後回しにしがちです。

 マーケティングも多くの人は苦手です。チラシのデザインどころか、ハガキの文面作りさえ苦戦する営業担当者はよく見ます。

 こうした部分を補完する体制が会社には必要です。

 「売るのは営業の仕事」と言って、全てを営業担当者に押しつけていては、顧客との長期的な関係を築く事はできません。

 直接売るのが営業担当者というだけであって、他の社員も間接的に支えているのです。


顧客情報の一元データ管理を 

 商談や取引の履歴は記録が必要です。記憶に頼ると忘れたり間違えたりします。特に怖いのは引き継ぎミスです。

 また、顧客に会う前は、過去の履歴を復習すべきです。さもないと、商談や面談の密度が薄くなります。それをするにも「記録」です。

 また、顧客への一斉案内をするにはデータ化が必要です。最近では顧客のタイプ別にDMを使い分けるのが当然になりつつありますが、それをするにも顧客管理が必要です。

 顧客管理はCRMとも言います。これは、顧客関係管理の略です。関係性を管理するのです。


那覇商工会議所報 2016年3月号掲載  


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2016年02月16日

ヒント(131) 営業力を強化するには(11)

 収益性を高めるには固定客を増やす事が重要です。

 会社のコストには、販売コスト、生産コスト、作業コスト、事務コストなどがありますが、売上高に対して販売コストが掛かり過ぎると利益が無くなってしまいます。

 そして、販売コストは、新規客と既存客とで全く異なります。


新規客だけでは採算が厳しい 

 結論を言えば、常に新規客を集め続けないと成立しない事業は安定しません。

 新規客は商品やサービスに対する安心感を持たないため、提案営業に時間が取られるうえ、成約率も高くないのが一般的です。また、取引が小規模だったり値引きが必要だったりもします。

 そのため、商品自体の利幅が余程高くないと、新規客との取引だけでは利益が出にくいのです。

 勿論、既存客も一定割合は離反しますし、売上高を増やす入口としても新規客の開拓は必要です。

 しかし、その割合が問題です。新規客の割合が多すぎると収益性が低くなり、かつ不安定になります。

 そうすると、毎年の昇給も厳しくなり、人材の質を高める事も難しくなります。

 業種によって異なるとは言え、売上高の8割が固定客で占められている会社は業績が安定しています。

 新規客を新規客で終わらせない事が重要です。


顧客満足を高める体制を 

 新規客を固定客にするには、満足の高さが必要です。そして、経営者なら誰しも顧客満足の向上を重視しているでしょう。

 しかし、営業担当者は必ずしもそうではありません。なぜなら、「売る事」と「売った後に満足して貰う事」は、別物だからです。

 勿論、売った後に満足して貰う事は、リピート購買の必須条件です。しかし、多くの営業担当者は、毎月の売上高(または粗利益)で成績を評価されます。

 よって、顧客満足の向上よりも、次の受注を優先するのが人情です。

 つまり、営業担当者だけに顧客満足向上の責任を負わせるには限界があり、会社全体の連携が必要だという事です。

 中でも、販売後にサービスを提供する担当者の役割が重要です。商品自体には問題なくても、納期や対応の柔軟さ、接遇などに不満を持つ顧客は多く、逆を言えば、サービスレベルが差別化要因になっています。


顧客情報の共有が重要  

 各社員の意識とスキルを高める事は、顧客満足を高めるのに必要ですが、それだけでは不十分です。

 まず、引き継ぎの問題があります。営業担当者が顧客から聞いた事、そして顧客と約束した事が、サービス提供者に確実に引き継がれなければなりません。

 ここに漏れが有ると、クレームに繋がります。口に出して言わなくても不満を持ちます。最近では、インターネット上に特定企業の不満を書き込む人も増えています。

 引き継ぎを確実にするには、顧客情報を一元管理する受け皿が必要です。つまり、顧客管理をしなければなりません。

 営業日報にしても「何をしたか」を書かせるだけでは不十分です。むしろ重要なのは「顧客が何を言ったか」という情報です。


商品を使いこなしてこその満足 

 顧客満足度を高めるポイントをもう一つ言うと、顧客に商品を使いこなして貰う事です。

 買った商品を十分に使いこなさず、したがって特に満足もしていない顧客は意外と多いのです。これでは、リピートは期待できません。

 顧客が商品を使いこなし、その良さを体感する事が「次」に繋がります。商品説明は売る前だけでなく、売った後も必要です。


那覇商工会議所報 2016年2月号掲載  


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2016年01月18日

ヒント(130) 営業力を強化するには(10)

 顧客から信頼されるには、営業担当者の対応スピードも重要です。

 売上高の低迷に悩む会社が多い一方で、買う側(顧客)からは「あの会社は対応が遅い」といった声をよく耳にします。

 顧客は必要以上に待たされると業者に不満や不信感を持ちます。そして、スピード対応の別業者から提案を持ちかけられると、そちらに乗り換える事を考えます。


忙しいのは他社も同じ 

 対応が遅い理由は「忙しい」からでしょう。確かに、受注が多くて業務をこなし切れない時期もあるとは思います。

 しかし、忙しいのはどの会社も同じです。忙しい中で、いかに顧客対応を良くするかの勝負をしなければなりません。

 まず確認をすべきなのは、忙しさと利益のバランスです。利益が十分に取れている忙しさなら問題ありません。業務多忙を理由に、顧客からの要請を断るのも手でしょう。

 しかし、利益が少ないのに忙しい場合は要注意です。経営的には受注を増やさないといけないのに、営業現場では顧客を待たせ、受注機会を失っているのです。


忙しい理由は何か 

 このような問題が生じるのは、労働生産性が低いからです。

 組織的な要因としては、業務量が特定社員に偏っていたり、社内連携が悪かったりすると、こうした問題が起きます。

 また、業務の繁忙期と閑散期の落差が激しい会社も、繁忙期で同じ問題が起きやすくなります。

 属人的な要因としては、整理整頓の苦手な人は、パニックに陥ったり、優先順位の付け方を間違ったり、顧客との約束事を忘れたりして、顧客を待たせる事があります。

 また、営業効率が悪いと、仕掛中の営業案件だけが増えて、売上高が少ないのに忙しい状態になります。


スケジューリングが重要 

 忙しくても顧客対応を早くする為には、スケジュールを早く明確にする事が先決です。

 顧客要望に対応するのに2週間掛かる場合、2週間掛かる事を顧客が分かっていれば、2週間待つ事を前提に予定が立てられます。しかし、2週間掛かる事が分からないと、予定が立てられません。

 実は、顧客の「業者の対応が遅い」という不満は、遅さ自体よりも予定が立たない(狂う)事に対する不満です。予定さえ明確なら待てるケースは多々あります。

 営業担当者は、対応自体に時間が掛かる場合は、真っ先に顧客にスケジュールを伝えなければなりません。そして、そのスケジュールを絶対に守る事です。

 ここを押さえられるかどうかで、顧客の心象はかなり違ってきます。

 忙しい人ほど、スケジューリングや進捗管理のスキルが必要です。


社内連携のレベルが問われる  

 営業担当者は受注が仕事であり、顧客との窓口も努めますが、実際に生産や作業をするのは現場部門です。そして、現場部門も忙しいものです。営業担当者だけでスピード対応するには限界があり、実際には現場部門の協力も不可欠です。

 営業担当者は、社内業務に精通し現場部門との調整に長けてなければなりません。

 また、現場部門に業務を引き継いだ後も、その業務が問題なく進捗しているかを「顧客との窓口」として管理しなければなりません。

 さもないと、現場部門の対応待ちが、そのまま顧客対応の遅さに直結してしまいます。

 その意味で、営業担当者には社内調整力が求められます。

 また、営業部門と現場部門の連携がスムーズに行くよう、調整ルールを会社として整備しておく必要があります。


那覇商工会議所報 2016年1月号掲載  


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2015年12月16日

ヒント(129) 営業力を強化するには(9)

 営業効率を高めるにはテンポの良さが必要です。

 営業担当者は商談をこなしていれば仕事をしているように思いがちですが、営業は成果を出してナンボの世界です。

 持ち時間が限られているからこそ、効率的に動く必要があります。


決定権者に会えているか 

 営業で最初に問題になるのは、決定権の有る人に会えているかどうかです。決定権者の心が動かなければ、商談は決まりません。

 動いていても成果が出ない、もしくは、成約までに時間が掛かる一番の原因は、決定権者ではなく担当者としか話ができていないからです。

 決定権者が物事を決めるのは一瞬ですが、担当者が決定権者に稟議を上げるには時間が掛かります。

 提案書や見積書などの書類も揃える必要があります。担当者の力量が低い場合は、補足説明や補足資料も順次求められます。

 そして、それだけ苦労しても、決定権者の「鶴の一声」で別の業者に決まる事は、これまで何度も経験されている通りです。

 つまり、営業活動で最も重要なのは「誰に会うか」です。ここを押さえないと効率が著しく低下します。


提案書作成に時間を割かない 

 他社との競争に勝つには提案力が不可欠ですが、だからと言って、提案書の作成に時間を掛け過ぎるのも問題です。

 頑張って提案書を作成しても、商談が決まらなければ「ただの紙切れ」です。そして、提案書作成に掛ける時間と成約率には、あまり関係がありません。

 そもそも、重要なのは「提案」であって「提案書」ではありません。提案は顧客との会話の中でするものであり、提案書はそれをまとめたものに過ぎません。

 つまり、口頭の提案で顧客の心が動いた後に、「最後のひと押し」として提案書を出すのであって、顧客の心を動かすために提案書を出すのではありません。

 提案書の作成には時間が掛かります。1日以上掛けて作成する営業担当者もいます。しかし、顧客が提案書を読むのに費やす時間は長くても3分です。

 このアンバランスさがどこから生じているか、考えてみた事はあるでしょうか。


口頭での一発勝負が重要 

 提案書に時間を割く羽目になる理由は、一つには決定権者でなく担当者とばかり商談しているからです。担当者が稟議を上げるには書類が必要になりますので、どうしても提案書を出す必要があります。

 もう一つの理由は、最初の商談で最後まで提案し切れないからです。最初の面談はヒアリングに徹し、一旦持ち帰ったうえで提案書を後日持参する、といったパターンです。

 このやり方は、効率が悪いうえに成約率も下がります。

 なぜなら、御社の商品に対する顧客の期待度が最も高まるのは、初回の面談だからです。気持ちが一番盛り上がった時に、核心をつく提案をぶつけるのが最も良い方法です。

 これが2回目の面談となると、相手側のテンションが下がります。そもそも、決定権者は忙しいのが普通です。2回目も会ってくれる保証はありません。


営業担当者の育成ポイント 

 だから提案はワンチャンスです。初回面談でヒアリングをしながら、相手の真意を把握し、顧客ニーズと自社の利益を両立させる提案を頭の中で組み立てて、分かりやすく提示する事ができなければなりません。大まかな原価計算もして、その場で概算価格も示せれば、成約率と効率はかなり上がります。

 営業担当者を育成するなら、こういった芸当ができるよう、訓練する必要があります。


那覇商工会議所報 2015年12月号掲載  


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2015年11月17日

ヒント(128) 営業力を強化するには(8)

 営業成績は営業スキルだけでなく、営業効率にも左右されます。

 買う気の無い相手を何度も訪問すると成約率が下がります。また、2回の訪問でまとめるべき商談を5回訪問すると、1カ月にこなせる商談件数が減少します。

 営業スキルが同じでも、営業効率を高めれば、その分受注高を増やす事ができます。


商談にはコストが掛かる 

 営業担当者の持ち時間は有限です。この持ち時間を如何に有効活用するかが勝負の分かれ目と言っても良いでしょう。

 営業効率を高めるには、商談には時間が掛かる、つまり、お金(人件費)が掛かる事を自覚する事が大切です。もう一つ言えば、移動経費も掛かります。

 月給30万円の営業担当者がいて、社会保険や移動経費なども含め、月40万円のコストが掛かるとします。この人が1日2回、月に40件の商談をこなすのなら、1回の商談に掛かるコストは1万円です。

 商談をしたが駄目だった場合は、会社の1万円札を破いて捨てたという事です。

 営業担当者にはこういうコスト感覚が必要です。コストが掛かっているからこそ、1回1回の商談の質を高めなければなりません。

 御社は営業に対するコスト意識をお持ちでしょうか。


見切りが重要 

 商談の質を高めるには、まず、客質を高めなければなりません。

 その為には、「目の前の相手に買う気が有るのか無いのか」を早い段階で見極める事が重要です。つまり「見切り千両」です。

 どんな商品やサービスにも、対象客層があります。

 そして、商品と客層が合ってないと、どんなに提案しても売れません。売れたとしても価格を叩かれます。なぜなら、そもそも商品を「欲しい」と思う気持ちが弱いからです。

 なお、対象客層を論じる際は、地域、年齢や性別、価格で語られる事が多いのですが、それだけでは不十分です。

 生活や業務において何を重視しており、何に困っているのかも論じなければなりません。なぜなら、それがニーズに繋がるからです。

 いずれにせよ、目の前の人が対象客層かどうかを見極める事が大切です。「誰でもいいから商談する」では効率が悪すぎます。

 なお、対象客層ではあっても、機が熟してない見込客もあるでしょう。こうした人達は連絡先を貰っておいて、メルマガなどを使い一斉的かつ継続的にフォローアップすべきです。


見込客を集めて選ぶ 

 目の前の相手が対象客層でないと分かれば、これ以上の商談は無駄です。つまり、その相手を切り捨てる事になります。見切りとは「見極めて切り捨てる」の略です。

 しかし、これは見込客数が十分にある場合です。見込客が少ないと、営業は商談相手を選べません。時間を持て余す訳にはいけませんので、買う気が有ろうが無かろうが商談する、という無駄な動きになります。

 これを避けるには、会社として見込客をしっかりと集客しなければなりません。また、同じ集客するにしても、対象客層だけが集まるように集客方法を工夫すべきです。

 会社全体で成約率が低い場合は、対象でない客層が多すぎるかも知れません。商品と広告がミスマッチを起こしているのです。

 いずれにせよ、対象客層を集めて選ぶ(見切る)。この人は違うと分かれば、次の人と商談すれば良いのです。これが営業効率を高めるポイントです。

 そもそも営業は、初回の商談で「欲しい」と思わせなければ負けです。最初が肝心です。

那覇商工会議所報 2015年11月号掲載  


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2015年10月17日

ヒント(127) 営業力を強化するには(7)

 インターネットの普及は、営業活動のあり方を大きく変えました。

 従来なら業者だけが知っていた事を、今では顧客がネット検索で簡単に知る事ができます。

 顧客は業者に会う前にインターネットで情報収集するのが当たり前になり、下手をすれば営業担当よりも多くの情報を知っている事もあります。

 この流れは、スマートフォンの普及によって、より顕著になりました。

 今や勉強不足の営業担当は顧客から相手にされません。また、ウェブサイトなどで積極的に商品情報を発信しない企業は、顧客から購買先の選択肢に加えて貰えません。

 世の中が変われば、営業スタイルも変わっていきます。この流れに取り残されると、売上高の確保が難しくなります。


情報過剰時代に対応する 

 通り一遍の営業トークが時代遅れになった一方で、別の変化も起きています。

 インターネットから得られる情報が多すぎて、何が自分にとって一番良いのか、顧客自身が混乱する事が増えています。

 顧客は、業務ないし生活の上で何かあれば、すぐにネット検索します。そうすれば「ああすべき」「こうすべき」といった情報がたくさん得られます。

 しかし、問題は情報が多すぎる事です。頭の整理がつかず、本来の目的もぼやけ、「どうしたら良いのか」と却って迷いが出てくるのです。

 よって、現在求められる営業は、顧客の頭を整理し、一番良い方向性を打ち出していくスタイルです。

 いつの時代も、売れる営業担当者は顧客から相談される人です。

 従来は「こんな商品が無いか」「こんな事ができないか」といった内容が主な相談内容でしたが、最近では「どうすれば良いのか」を問う相談が増えています。

 これに応えられるかどうかで、営業成績は大きく違ってきます。


ヒアリングの力をつける 

 顧客の相談に応えるには、自社商品に関する豊富な知識が必要です。

 商品特性だけでなく、技術面や納期、原価なども含めてです。そもそも、専門知識が無ければ相談をしてくれません。

 しかし、商品知識は必要条件ですが十分条件ではありません。

 顧客が置かれている状況を理解し、「自分が顧客の立場ならどうか」と想像力を巡らし、方向性を整理するスキルが必要です。

 営業活動ではヒアリングが重視されます。しかし、相手の発言を額面通りに受け取ってはいけません。

 そもそも、顧客は本当の事を言っているでしょうか。顧客自身が自分のやるべき事を理解しているでしょうか。自分のやりたい事の優先順位がついているでしょうか。自分の考えを正しく伝える表現力が顧客にあるでしょうか。

 そう考えると、もっと高いレベルのヒアリングが必要だと分かると思います。

 重要なのは「顧客が何を言ったか」ではなく「なぜそう言ったか」です。つまり、発言の「内容」より、発言の「意図」が問題であり、顧客にそう言わしめた「背景」を理解する事が何よりも重要なのです。


顧客の事をもっと知る 

 顧客管理の重要性は以前から言われていますが、今こそ営業担当は顧客の事をもっと知るべきです。

 顧客の立場を想像するにも、具体的な事を知らないと、想像しようがありません。

 顧客が法人なら例えば、顧客が属する業界で何が課題になっているか知っているでしょうか。顧客の経営課題や事業戦略を少しなりとも知っているでしょうか。

 顧客をよく知り相談に乗る。そこには価格競争はありません。

那覇商工会議所報 2015年10月号掲載  


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2015年09月16日

ヒント(126) 営業力を強化するには(6)

 営業目標はただ立てるだけでなく、しっかりとPDCAサイクルを回す事が重要です。

 目標はP(プラン:計画)ですが、立てっ放しでは意味がありません。

 目標の達成状況を評価し、達成や未達成の原因を深く掘り下げて、今後の改善に活かしていかねばなりません。


PDCAはCが大切 

 目標管理では、まず目標に重みが無ければなりません。

 目標を何としても達成するという強い意思がないと、創意工夫は生まれませんし、それ以前に、営業活動が受け身でダラダラしたものになります。

 その意味では、目標は達成状況をしっかり評価していく必要があります。達成してもしなくても何も変わらないのであれば、目標は形骸化します。P(計画)を活かすにはC(チェック:確認)が大切です。

 目標の達成状況のC(確認)の後は、A(アクション:対策)が来る訳ですが、ここで多いのは「次は頑張ります」「もっと動きます」と言った精神論です。特に、目標未達の場合に多い発言です。

 今まで仕事をサボっていた人なら、それも対策と言えるかも知れませんが、そうではないでしょう。 これまでも何とか目標を達成しようと頑張っていた筈です。精神論や抽象論では、恐らく今後の結果も同じです。必要なのは具体策です。

 では、具体策が出てこないのは何故か。それは、何が問題なのかが見えてないからです。つまり、原因分析が浅いのです。

 PDCAのC(確認)は単にP(計画)とD(実施)の比較だけでなく、原因分析をする所までを指します。


原因分析をしているか 

 原因分析で駄目なパターンを3つあげます。

 一つ目は、原因分析をしないケースです。「なぜ目標を達成できなかったんだ」「すみません。次は頑張ります」「次は達成するように」といったパターンです。

 文字にすると会話が噛み合ってない事がよく分かりますが、これは、上司の言葉が質問ではなく「叱責」になっているからです。

 上司の叱責に対する返事は部下の謝罪であり、また、上司がそれで納得している訳です。営業会議でよく見かける光景です。

 二つ目は、単なる現象を原因と混同するケースです。例えば、「見積りで負けた」「他社に取られた」「注文が少なかった」と言ったものです。

 問題は「それは何故か」です。

 見積りで負けたと言っても、本当に価格だけの問題でしょうか。提案が弱くて廉価商品と一緒に見られたからではないでしょうか。

 見積額は断り文句であって、本当は対応の遅さに不満を持たれたのではないでしょうか。

 本当に価格だけの勝負だったとしても、なぜ競合他社よりも高い金額になったのでしょうか。

 こういった事を流さずに、しっかりと掘り下げていく事が大切です。


活動内容に着目する 

 三つ目は、能力の問題で片付けるケースです。

 営業職の適性は数カ月で分かります。適性の無い営業担当には、別の道を歩んで貰うべきでしょう。

 しかし、営業を何年もやっている人は、最低限の能力は有る筈です。

 成果が出ないのは、能力不足もあるかも知れませんが、それ以上に大きいのは動き方です。

 営業日報を1カ月分見て下さい。どんな活動をしていたでしょうか。

 件数は足りているでしょうか。訪問先が偏ってないでしょうか。動きに無駄がないでしょうか。行動に計画性が見られるでしょうか。

 具体的に何が問題か。そこから今後の具体策が見えてきます。

那覇商工会議所報 2015年9月号掲載  


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2015年08月18日

ヒント(125) 営業力を強化するには(5)

 営業成績を上げるには、目標の立て方が重要です。目標の立て方に問題があると、目標管理が形骸化し、成果を出せません。

 目標設定にはいくつかのポイントがあり、それを押さえる事で営業力が高まります。


目標が必要な理由 

 そもそも目標は何の為にあるのでしょうか。一つは意欲向上の為です。もう一つは評価の為です。

 しかし、それだけではありません。行動計画を立てる為でもあります。

 何事もそうですが、目標を立てるだけでは何の成果も生まれません。成果を生むには、具体的な行動が必要です。しかも、その「行動」は計画的でなければいけません。

 減量を例に挙げると、体重を3ヵ月で5キロ落としたいと目標を立てても、それだけでは体重は落ちません。食事や運動などの生活習慣を見直して、具体的な行動計画に落とし込み、それを継続実施して初めて、減量目標は達成されます。

 営業目標でも同じです。目標を立てたら達成方法も考えておかねばなりません。両者はセットです。

 具体策なき目標はただの願望です。それでは結果は変わりません。


目標を因数分解する 

 目標の達成方法を考える際は、目標を因数分解する事が重要です。

 売上高は客数と客単価の掛け算です。目標達成の為に増やすのは、客数なのか、客単価なのか、両方なのか、を決める必要があります。

 客数は顧客数と取引回数の掛け算です。客数を増やす為に、顧客数を増やす、つまり新規客を増やすのか、取引頻度を増やすのか、方向性を明確にしなければなりません。

 客単価も同様に、商品単価とアイテム数の掛け算です。商品を値上げするのか、それとも、値下げするのか。また、アイテム数を増やすのであれば、提案営業も必要です。

 これらを顧客別・商品別の販売実績を見ながら、具体的に落とし込んで行く事により、為すべき事が見えて来ます。

 その結果、本人の頭が整理できるだけでなく、上司による指導もしやすくなります。

 目標を行動に落とし込む段階で躓く営業担当者は、恐らく普段から結果を出せていないと思います。

 目標未達を踏まえて営業指導するよりも、目標達成シナリオを描けない時点で前倒しの指導をする方が、営業管理として優れています。


目標の立て方も重要 

 ここまでは立てた目標の達成について話を進めて来ましたが、より重要なのは目標の立て方です。

 目標の達成方法をいくら考えても達成イメージが湧かない場合、目標の数字自体に無理が有るかも知れません。

 達成出来そうにない目標だと、本人が最初から諦めてしまい、成果を出す為の行動が生まれません。高めの目標を設定する場合は、達成意欲が起きる範囲内で考えるべきです。

 また、営業目標は経営目標が元になります。よって、経営目標自体が適切でなければなりません。

 「売上高さえ増えれば良い」という経営スタンスは危険です。会社は適正な利益やキャッシュフローが無ければ維持できません。

 収益性の高い会社は売上高よりも粗利益を重視します。また、資金繰りの良い会社は、売掛回収や在庫圧縮を重視します。

 営業目標も売上高の一本槍では極端な行動を生む可能性があります。売上高しか言わない会社では、粗利益率の低下や売掛金の回収遅れが起きがちです。

 また、売上高の総額しか問題にしないと、手間の掛かる新規開拓は後回しになりがちです。これだと長期的にはジリ貧になります。

 営業目標は長期的な経営方針を見据えて適切に立てましょう。

那覇商工会議所報 2015年8月号掲載  


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