てぃーだブログ › 中小企業診断士 井海宏通の「経営のヒント」 › ヒント(139) 労働生産性を高めるには(4)

2016年10月18日

ヒント(139) 労働生産性を高めるには(4)

 労働生産性、すなわち「従業員一人あたりの利益」を高めるには、短い時間でより多くの利益を稼ぐ考え方が大切です。

 時間の短縮には業務効率の向上が必須ですが、それだけではありません。営業や企画なども含めた事業全体の効率を高めないと労働生産性は高まりません。

 つまり、事業モデルの最適化が問題になります。


苦手分野には手を出さない 

 個人の職種には適性があります。営業が得意な人には営業、事務が得意な人には事務をさせるのが原則です。企画のできない人に企画の仕事をさせても、時間が掛かる割には大した成果を出せません。

 それと同じく、企業が手掛ける事業にも向き・不向きがあります。 自社の組織文化、技術力、ノウハウ、販路や調達先などによって、得意分野や苦手分野が決まってきます。

 自社の得意な事業は効率的に利益を得る事ができる一方、苦手分野は頑張っても効率が悪く、利益を出しにくいのが現状です。

 現場が一生懸命頑張っているのに同業他社よりも収益性が低いのは、御社にとって苦手分野だからかも知れません。

 事業環境には良し悪しがあります。ある分野が最近伸びているからと言って、自社が得意でもない事業に安易に手を出すのは弊害が大きいです。

 その事業で苦戦するだけではありません。企業規模に対して事業の数が多すぎると、経営資源(人・物・金)が分散して、得意分野たる中核事業まで弱体化しがちです。

 事業は自社の得意分野に絞る事が大切です。


固定収入の仕組みを作る 

 毎月の売上高が安定しないと繁忙期と閑散期の差が激しくなり、労働生産性が悪化します。

 社員数は閑散期に合わせて繁忙期はパートやアルバイトなどで乗り切るのが理想です。

 しかし、実際には多くの会社が繁忙期に合わせて人員を揃えているので、繁忙期以外では、どうしても人員過剰になります。

 特に、受注型の業種では売上高の波が大きくなりやすく、また、集客や営業活動に掛かるコストも馬鹿になりません。

 そこで、事業モデルとしては、安定収入が得られる仕組みを作る事になります。その際のキーワードは「囲い込み」と「紹介」です。

 まず、顧客との取引は一過性であってはいけません。それだと、営業活動の効率が悪くなります。継続的な取引を確立し、リピーターとして囲い込まなければなりません。


紹介による新規取引を 

 次に、紹介による受注を増やす事が大切です。

 広告宣伝費の削減効果だけではありません。紹介を受けた事により、最初から好印象を持って貰えるため、成約率も高くなります。

 紹介を増やすには、顧客満足の向上に加え、紹介しやすくなるような自社の特徴付けが必要です。

 具体的にどのようなセリフで自社を紹介して貰うのか、予め考えておいた方が良いでしょう。


仕事の粒を小さくしすぎない 

 「規模の利益」という言葉がありますが、一般的に事業や仕事は大きいほど効率が良くなります。

 裏を返せば、業務の粒が小さいと効率が悪くなります。

 少額の取引、小ロット生産、小口配送などは、時間が掛かる割には利益額が少なく、労働生産性が低くなりがちです。

 効率の悪さに見合った高めの代金を貰えるなら別ですが、そうでなければ、顧客構成や商品構成の見直しも必要です。

 その判断材料は数字です。やはり計数管理は重要です。


那覇商工会議所会報誌 2016年10月号掲載



Posted by ikai at 18:29│Comments(0)
 
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