てぃーだブログ › 中小企業診断士 井海宏通の「経営のヒント」 › ヒント(137) 労働生産性を高めるには(2)

2016年08月17日

ヒント(137) 労働生産性を高めるには(2)

 労働生産性、すなわち「従業員一人あたりの利益」を高めるには、時間の概念が重要です。なぜなら、一人あたりの勤務時間が限られているからです。

 限られた時間でより多くの成果を出す事が労働生産性の向上に繋がります。


まずは稼働率の向上 

 設備(モノ)には「稼働率」の概念があります。設備がフル稼働の何%使用されているかを示す概念です。勿論、稼働率が高いほど収益が増えます。

 それと同じく、従業員(ヒト)の仕事にも稼働率があります。全ての勤務時間に対する、直接利益を生む業務をしている時間(稼働時間)の占める割合が、人員の稼働率です。設備と同様、稼働率が高いほど、収益が高まります。

 分かりやすいのは現場作業者で、現場に携わっている時間が勤務時間の7割なら稼働率は7割です。残り3割は、掃除や事務などです。

 掃除も必要と言えば必要ですが、掃除をいつもの3倍やっても収入が3倍になる訳ではありませんので、稼働時間には含めません。

 仕事量に波がある会社では、稼働率が高い時期と低い時期があります。年間を通じて稼働率が低いと、労働生産性が低い、つまり、収益が少なく人件費の重たい会社になります。

 繁忙期に合わせて人員を揃えていると、閑散期に人手が余り、稼働率が低くなりがちです。繁忙期と閑散期の中間位でバランスを取り、繁忙期は外注などで対応する方が、収益性が高まります。

 また、繁忙期に業務が集中しないように、仕事を分散する取り組みも重要です。


持ち時間を決める 

 稼働率が高い、つまり、利益を生む業務に携わる時間が増えたら、次は効率が問題になります。

 いくら現場に携わっている時間が長くても、必要以上に時間を掛け過ぎると、こなせる仕事量が少なくなって、労働生産性が悪化します。

 仕事では、納期を守る事が重視されますが、納期さえ守れたらそれで良い訳ではありません。

 同じ時間で多くの仕事をこなすには、一つの仕事に掛ける時間に上限を設ける事が大切です。つまり、仕事には「持ち時間」があり、持ち時間の範囲内で仕事を完成させなければなりません。

 これは、作業だけでなく、営業や事務においてもそうです。決められた時間内で業務をこなす習慣が必要です。

 プロの仕事に質が求められるのは当然ですが、量も求められます。両方揃って初めてプロであり、片方しかないのはアマチュアです。

 業務の一つ一つに持ち時間を決めて取り組む事によって、限られた時間で多くの仕事(出来高)をこなす事が出来るようになります。


合格点を量産ができるか 

 仕事に対する意識が高い人が陥りがちな落とし穴として「完璧さを求めすぎる」という事があります。

 勿論、質の追求は結構な事です。問題は時間を掛け過ぎる事です。

 仕事の質を決めるのは顧客です。顧客が求める水準をクリアすれば、仕事としては合格です。

 合格点を取った後にすべき事は、「次の仕事」で合格する事です。今の仕事で点数を更に積み上げる事ではありません。

 勿論、顧客が仕事の質の上乗せに対して対価を追加で支払ってくれるなら別です。しかし、そうでなければ、仕事をする人の自己満足でしかありません。

 この点は従業員が個人で判断するのではなく、会社として基準を決める事が重要です。仕事の質は、不足しても過剰であっても駄目なのです。


那覇商工会議所会報誌 2016年8月号掲載



Posted by ikai at 11:13│Comments(0)
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。